🌟坂本寛之(サカモト ヒロユキ)
⚽️横浜Fマリノスジュニアユース追浜 → 横浜Fマリノスユース
多くの人々にとって人生最後の学生生活になるであろう大学時代。そこは大人として社会へ出ていく準備のできる最後の時間であり、気が付けばそれも早いもので半分が過ぎ去ってしまおうとしている。勉強に励み自分自身を模索する者、夢の実現に向けアルバイトに追われる者、友達とたくさんの思い出を作ろうとする者、部活に情熱をかける者、どの過ごし方が正解で不正解であるということは決してない。しかし、だからこそ意識の差でこの四年間が濃密な時間であるかないかが決まる。そんな私は幸せなことに多くの部員が大きな目標を持つ集団であるア式蹴球部に所属することができた。
さかのぼること15年前、地元少年団のコーチをやっていた姉の友達の親に誘われ、サッカーを始めた私。はじめてボールを蹴った日のことは楽しかったかどうかですら全く覚えていない(笑)しかし、気が付いた時には、ほかのスポーツを体験することもなくチームに加入していた。その当時は、こんなにも長くサッカーを続けるとは自分を含め誰も思ってはいなかっただろう。現に当時の同期で今も本格的にサッカーをしているのは自分を含め二人だけである。まわりからはそんなに長くやっていて飽きないのかと聞かれるが、不思議なことに嫌になることはあっても飽きたことはなかった。そこには「サッカーは人生の縮図」という言葉があるように、サッカーを通して、多くの経験や、たくさんの人、素晴らしい言葉に常に出会える環境があったからなのかも知れない。
そんな今までのサッカー人生で出会った私が大事にしている言葉を紹介したいと思う。「勝負の神は細部に宿る」という言葉を皆さん聞いたことがあるだろうか?ア式蹴球部OBである岡田武史さんの言葉であり、「運」というものは誰にでも、どこにでも流れているため、それを掴みとるために自分にできる限りの準備や努力は小さなことでも怠ってはいけないという意味である。この言葉を信じ今まで私は突き進んできた。
しかし、誰しも結果が出ずに長い間上手くいかなくなると自分はダメなのではないかと劣等感に苛まれるものだ。そんな状態が大学に入学してから続いていた。特に今シーズンに入り同期の仲間が試合で活躍する姿をベンチから目の当たりにし、試合に出場できない悔しさからチームの勝利を心から喜べないやるせなさがあった。関東リーグ、アミノバイタルカップの二試合でスタメン出場したものの定着することができず、ただ単に「試合に出たい」という結果に執着しすぎるあまり、右肩上がりに調子を伸ばすチームに反比例し、私の調子は落ちていった。そして、9月に行われた総理大臣杯ではメンバー落ちし、気が付けば後期リーグ開幕の一週間前にはBチームでプレーしていた。今思えばその頃の私の頭の中にあの言葉は忘れ去られ日々のトレーニングを淡々とこなしていた。Bチームに落ちてしまうことは何度かあったが今回はタイミングがタイミングであり本気で悔しく、いろいろと自分自身を考え直すある意味良い機会だと思った。いや、そうしなければならないと直感的に感じた。
自分自身を見つめなおした結果、大まかに二点気づくことができた。一つ目は結果にこだわるあまり、成長を実感できていなかった。要するにある目標を達成するために自身の短所といったものに段階を追って克服する作業をすっ飛ばしていたのだ。今ある長所のみで勝負しようとしていた。成長を実感することがスポーツをする上でのやりがいであり、楽しさでもある。そこを抜きにしていたのでは淡々と練習をこなしてしまうものだ。そして成長の先にしか成功は待っていないということ。
そして、二つ目は「勝負の神は細部に宿る」この言葉が示すように小さな積み重ねを怠っていた。人間上手くいっていない時、小さなことを意識しただけでは何も変化は起きず、大きな変化を起こさなければならないと思ってしまう。しかし、本当に大事なのは先ほど上で述べたように小さなことの積み重ねである。このことを再認識してからは練習前のケアや体に刺激を入れる時間など普段何気なく行っていたものに力を入れたはじめた。そしてこれら二つのことを意識してからトレーニングへのモチベーションも変わり、後期の二節目桐蔭横浜大学戦でチャンスを掴みスタメン出場することができた。翌節の試合はベンチ入りにとどまったがあの時のような感情は一切なく次のチャンスに備え日々のトレーニングに意欲的に臨みポジション争いをむしろ楽しんでいる。
今後も、幾多の困難が待ち受けているあろう中で、苦しい時にこそ努力を惜しまないこと。それが大きいもの、小さいものに関わらず。すぐに結果は出なくとも必ず成長することはできる。つまり成長の先に待っている結果やチャンスを己自身の手で必ず掴みとるために細部にこだわり続けていきたい。そして、大学に通えている両親への感謝の気持ちを形にするためにも、この四年間を誰よりも濃いものにする。