news-men

二部降格のご報告とお詫び

                   二部降格のご報告とお詫び

 

                                 早稲田大学ア式蹴球部 古賀 聡

 

 早稲田大学ア式蹴球部の二部降格が、5日の関東大学リーグ第21節桐蔭横浜大学戦での敗戦により決まりました。大学日本一の熱いご支援を頂きながら、最低限の一部残留さえも果たすことが叶わず、皆様方に心よりお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。
 「二部降格」、二度とあってはならないことでした。絶対に守らなければならないものでした。伝統を築く礎となってきた一部の舞台をあまりにも簡単に失いました。一度失えば、すぐには手に入らない、辿り着くことが困難を極める、かけがえのない舞台を自ら手放してしまいました。19節の国士舘大戦に敗れた週明けの火曜日、油性ペンで黒く太く塗りつぶした「絶対残留」「一部死守」のプラカードを自身で作り掲げ、自分のちっぽけなプライドを捨て、最後のチャンスを最大の危機意識を持って臨もうとしたものの、過去4年間、優勝争いだけを戦ってきた経験しか持たないチームに、残留争いをたくましく闘えるだけのメンタリティは全く備わっていませんでした。
 
 「平和ボケ」この言葉がシーズン中、何度も何度も自分の頭の中に去来していました。それを拭い去ろうと、自他共にストレスを与え、プレッシャーをかけ、心身共にもがき苦しめる環境を作り出そうと努めました。
 前期9位、降格のリアリティを持ち、臨んだ夏のオフシーズン、アミノ杯準優勝、天皇杯東京都予選優勝という手応えと、総理杯、天皇杯本戦での惨敗という危機感とを両方持ち合わせることができました。この期間、過去最多の公式戦16試合を戦うことができ、厳しい環境、状況に晒される中、少なからず個々人がたくましさを増してきたと、いつのまにか「充実」を感じる自分がいました。さらに前期終了した時点でターゲットとして意識し続けてきた後期の開幕からの二戦で連勝を飾り、チームは描いていた軌道に乗ったと大きな勘違い、見誤りをしてしまいました。それが選手にも伝染してしまったのでしょう。
 続く日体戦で終了間際に追いつかれ引き分けると、退場者を出した10人の明治にも敗れ、筑波には終了直前に決勝点を奪われ敗戦、早くも優勝の可能性が潰えると同時に、選手たちの自信が揺らぎ始めました。大学選手権出場権を得て、残された最後のタイトルを手にしようと再出発するものの、降格に対しての恐怖、不安が先立ち、攻守にアグレッシブさを出せず、敗戦を重ねてしまいます。しかし、状況が追い込まれていく中、全部員が危機感を露わにして行動できていたかといえば、全くそうではなく、「いつか誰かが」やってくれるだろう、「まだなんとかなるだろう」という、まさに「平和ボケ」の緊張感でしかありませんでした。
 
 初めて全部員に危機感が生まれ「自分が今」やらなければ残留できないと動き出したのが、20節の早慶戦に敗れてからでした。桐蔭横浜大戦前の一週間は4年生がプライドを捨て、恥をさらしても、格好悪くても、とにかく残留するためにこの一戦を何が何でも勝つという、これまでにない凄まじいエネルギーを出して、チーム内でぶつかり合いました。私はこの力の大きさを目の当たりにし、なぜこの危機感を伴った素晴らしいエネルギーをもっと早く引き出せなかったのかと、なぜブレーキをかけさせてしまったのかと、大きな悔恨の念を抱きました。その一週間の本気の危機意識やエネルギーが桐蔭横浜戦前半のチームを背負った最上級生小林、中山のゴールに繋がったと感じています。しかし、後半立ち上がりに失点を喫すると、守備陣の自信喪失から失点を重ね、あっさりと逆転を許し、残留へのラストチャンスをものにすることができませんでした。
 残留できるチャンス、勝ち点を積み重ねるチャンスは何試合もありました。少なくとも引き分けて勝ち点1を取るチャンスを何度も逃し続けました。残留争いをしたことのないチームは勝ち点1の重みを本当の意味で理解できていませんでしたし、それを私が伝えることができませんでした。
 
 今のア式蹴球部の部員達は揃いもそろってみんな真面目です。しかし、ア式伝統の人間臭さや野武士のようなたくましさ、貪欲さは影を潜めてしまっています。今や、早稲田に入って来る選手の多くは、良くも悪くも優等生でサッカーエリートなのです。これまでの人生において挫折をしたことがなく、危機的状況に対しての免疫もほとんどの学生が持っていません。だからこそア式蹴球部に入ってからの年月で厳しいストレスに晒し続け、プレッシャーを先輩、後輩、同期、スタッフからかけ続ける必要があります。そのストレスやプレッシャーに対しての耐性を私自身が部員達に様々な手段を使って働きかけ、植え付けていくことができていれば、今回の残留争いの中でも「もう少し」は本来の力を出せていたに違いありません。その「もう少し」があれば残留できていたことでしょう。そうした過程を怠ったこと、やり切れなかったことを今、痛恨の思いとして感じています。
 
 来季の体制は未定ですが、今、私ができることは2017年シーズンに「一部復帰」を果たすために、桐蔭戦前の危機感と勝利への渇望に満ち溢れたトレーニング環境と部内の緊張感を今から作り続けていくことであると感じています。そして今回の悔やみきれない経験を現役部員達に教訓として胸に深く刻み込ませ、なぜ力を出せなかったのか、さらに検証を進めていくことであると感じております。
 今シーズン、耳触りの良い「リーグ戦連覇」「三冠奪取」などということを私自身が軽々しく誓いとして掲げ、全くもって実が伴わなかったことに対しまして、お詫び申し上げると共に、その無責任さを恥じ、自分の発した言葉に対しての責任を厳しく見つめ直していきます。12日に最終節を残していますが、選手、スタッフ共々、2017年の「一部復帰」に向け、すでに日曜日から再スタートを切っております。4年生も来年の一部復帰に向けて、残り一週間、自分がア式蹴球部に、下級生に何を残せるのかを必死に考え、行動で示そうともがいています。まずは次節の駒澤大学戦の勝利を掴み取ることこそが「一部復帰」への本当のスタートであると決意し、闘いに挑みます。2016年シーズン、ア式蹴球部を支えて頂き、共に闘って頂いた多くの皆様方にこうした結果でしかお応えすることができなかったことを深くお詫び申し上げると同時に、苦しい状況の中でも最後まで熱い想いを送り続けて頂いた皆様方に心より厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。あつかましい限りですが、今後ともご叱責、ご指導、ご鞭撻の程をどうかよろしくお願い致します。