早慶サッカー定期戦直前特集 【第5回】榎本大希×近藤貴司
FW榎本大希(スポ4=横浜F・マリノスユース)とMF近藤貴司(教3=三菱養和SCユース)。低学年の頃から試合に出ている2人は経験も豊富で、ワセダのサッカーにおいて攻撃でも守備でも重要な存在である。そんな彼らは今季のワセダをどう見ているのか、そして早慶サッカーに向けても話してもらった。
戦い方が染み込んで理解し合っている
――厳しい戦いとなりましたアミノバイタルカップですが、改めて振り返ってみていかがでしょうか
榎本 一戦目から最後の青学大戦まで一つも楽な試合は無くて、「総力戦」という言葉通り本当に全試合全力で戦って、色々と試された一週間だったと思います。最終的に青学大に勝ててプレッシャーから解放された部分もありましたが、数日経ってみて考えるとやはり目標としていた優勝はできませんでしたし、その結果が今の自分たちの弱さというか実力なのかなと思います。ここからまた切り替えてやっていかなくてはいけないのかなというのを思い知らされた大会でした。
近藤貴 個人的には流経大戦でのパフォーマンスというのが今季一番手応えを感じていますが、チームとしてはアミノバイタルカップ連覇を目標にしていた中で7位という結果は本当に悔しかったです。試合を通じて思ったことは、攻守においての個の力がまだまだ足りていないなというのを感じました。きょうからまたオフシーズンという位置づけになっていますが、監督もおっしゃっていたようにやはり「いかに個の力を伸ばしていけるか」という点が重要です。7位という結果が今のチームの現状なので、オフシーズンの中でいかに成長していけるかが鍵になってくると思います。
――近藤選手はリーグでは得られなかった今季初得点をアミノバイタルカップで決められました
近藤貴 正直リーグ戦で得点を取れていなかったことに対しては焦りもありました。動き自体はそんなに悪いと思っていませんでしたが、ゴールを決めてチームの勝利に貢献したいという思いがありました。そういった中でアミノバイタルカップが開幕して、やっと点を決められたので、少しほっとした部分もありました。
――3回戦での流経大戦でのアシストについて
近藤貴 太郎(MF田中太郎、商2=静岡・藤枝東)から良いボールが来たので、シュートという選択肢もありましたが、秋岡が良い動きをしていてそっちのほうが確実に入るかなと思ってパスを出したら決めてくれました。それについては良い判断ができたかなという風に思っています。(自分自身でゴールを決められる位置にいながらパスを選択したのは)あの時は一心に勝ちたいがあったので自然と体が確実なほうに動きました。
――その一方関東大学リーグ戦(リーグ戦)は2位という結果で終えました。お二人は攻撃の中心を担う存在ですが、今季のオフェンス面の手応えはいかがですか
榎本 昨季からもそうでしたが、今季のチームは特に、ボールを奪ってから早い攻撃という得点パターンが得点に結びついているシーンが多いんじゃないかと思っています。東洋大戦や明大戦の2点目もそうですが、相手のポゼッションを高い位置で奪って、ショートカウンターならぬロングカウンターで、自陣からサイドハーフやサイドバックも上がってきて、厚みのある素早い攻撃ができるようになったんじゃないかなと思います。
――よりワセダのやりたい得点パターンに近づいてきた感触がありますか
榎本 そうですね。昨季から積み上げてきたということもありますし、一人ひとりに戦い方が染み込んで理解し合っているというのもあります。特に攻撃の時は今出ている選手は判断を間違えない選手が多いですし、無駄なプレーも少なく、素早く攻撃に直結できるアクションやプレーの選択ができているのが自信につながっていると思います。
――「染み込んでいる」という意味では、近藤選手はスタメンとしてワセダの試合に出て3年目となりますが、今季のワセダの攻撃をどう見ていますか
近藤貴 自分たちは守備の時間が多くて攻撃のチャンスは比較的多くないと思っていて、自分がボールを受けたらスピードを生かしてドリブルで突破していくというのを意識しています。その中でFWの動きをなるべく見るようにして、良い関係で相手のDFを崩していくというのが、慶大戦での得点だったり、なるべくFWとの良い距離感を意識しています。
――その慶大戦では近藤選手のアシストで榎本選手が得点を決めるという場面もありましたが、近藤選手から見て榎本選手というのはどのようなFWでしょうか
近藤貴 大希くんは本当に賢い選手なので、ポジショニングだったり、自分が顔を上げたら常に気づいて動き出してくれたり、良い所にポジションを取ってパスを受けたりしてくれるので、そういった意味で個人的には一番やりやすくて頼もしいFWだと思っています。
榎本 いやあ、ありがとうございます(笑)
――逆に榎本選手が中盤で近藤選手を生かすようなパスを出す場面も多いですが、右サイドを担う近藤選手をどう見ていますか
榎本 サイド攻撃だけじゃなくて守備でも、よく見ていないと気付かないようなところでたくさんチームに貢献してくれているので、守備での絞りや、良いポジショニングから先手を取って出られるところでは、間違いなく抜群の選手だと思います。僕だけじゃなく他の人が困っているところでの助ける気持ちだとかは、よく見ていないと分からないですが、そういう地味な部分までコツコツとやってくれています。たかしと言えばスピードとかドリブルとかが特徴でみんなが注目するところだと思いますが、それ以外にも目立たないところでも絶対に必要となるプレーをしてくれる、完成度の高い選手だと思います。
――榎本選手は特に今季からワセダの「エース」と呼ばれることが多いですが、それについてはいかがですか
榎本 早スポだけでなく他の媒体でも結構言ってもらって、自分でもびっくりしています(笑)。自分が決めてやるぞという意識はありますけど、だからと言って自分のやることは一緒なので、そういう点は昨季から何も変わらないですね。
―――近藤選手は1年目から試合に出ていて今季で3年目になりますが、今季に入って何か変わったと感じることはありますか
近藤貴 昨季の後期リーグの途中でケガをして何が自分に足りないのかと考えた時に、ドリブルで仕掛けていってもなかなか人を抜けないということがあったので、瞬発力の部分を強化したり、オフシーズンで筋トレをしたりしました。その成果が表れたからかは分かりませんが、リーグ戦が始まってから相手の左SBと対峙する時に負けている感じはしませんでしたし、そういった強みの部分では負けないようにしようと思います。
――スタメンとして試合に出るのは、昨季後期リーグの途中でケガをされて以来、今季の前期リーグが初めてでしたが
近藤貴 途中から出てもスタメンで出ても、自分がやるべきことやチームとしてやるべきことは変わりないので、特にスタメンだからどうということはありませんでした。
――ワセダでは前線の選手であっても前からの守備がかなり求められていると思いますが、守備面での意識について日頃考えている点は
榎本 ワセダではAチームやAサブなどどのチームもメンバーもFWはセンターでの守備も求められていると思います。特にリーグ戦で出るためにはただ取りに行くだけではボールを奪えない選手もたくさんいますし、がむしゃらにいくとか強い当たりでくとかは当たり前です。求められているからやるというよりは、ただ単にボールを奪いたいとか攻めたいと思うので取りにいっている部分はあります。監督からも能動的に守備ができないと使えないと言われますが、まさにその通りだと思います。自分で考えて動いていってボールを取れるのは楽しいです。
――能動的な守備という面では近藤選手も前からのプレスなどが見られますが、守備面ではワセダに入る前と入った後で変わりましたか
近藤貴 ユースの時も守備のことは結構言われていましたが、ポジションはFWだったので前からプレッシャーをかけることは気を付けていました。ワセダに来てからもそんなに意識的には変わってないですが、サイドハーフになったので守備の仕方について最初は戸惑う部分もありました。少しずつですが良くなってきたからこそ試合に出られているのかなと思います。
――リーグ戦開幕前の特集取材の際に、チーム全体で守備の意識を持ちたいという話がいろんな選手から挙がっていました
近藤貴 センターバックがことしは身長が低かったりリーグ戦での経験が少ない選手が増えたりして、個の力ではまだ劣る部分はあると思うのでチームとして補っていかなくてはいけないです。状況を判断して全員が守備の意識を身に着けることはすごく大事なことだと思います。
――榎本選手はアンケートに今のワセダのチームについて「大胆なプレーが欲しい」と書かれていました
榎本 リーグ戦で数試合ちょっと良くなかったかなというのがあって、試合の中盤でシュートが打てなくて攻撃が停滞する時間帯や、推進力が無くなって自分たちのペースが持っていかれてしまった時間があって、そういう時に自分たちの失点してしまったりしてすごくもったいなかったかなというのはあります。特に狭いスペースから前へ出て仕掛けていくなど積極的な姿勢が自分たちのペースを取り戻すことに繋がるんじゃないかなと最近思います。今試合に出ている人たちは判断を間違えない選手が本当に多いので、バランスや戦況も見ながらやっていかなくてはいけないのではないかと思います。
――しかしチームとしての状況判断が求められる中で、そういった仕掛けは1試合の中で何度もチャレンジできるものではないというのが現状なのでしょうか
榎本 アミノバイタルカップの数試合で感じたんですが、リーグ戦で守備がしっかりしているチームはちゃんと一人ひとりのポゼッションが確立されているチームが多かったです。スペースがあまり無いなかでプレーをしていかなくてはいけなくて、前を向くとか間で仕掛けるというのが難しいですが、もっと頭を使ってもっと積極的にやっていかなきゃいけなんじゃないかなと思います。今回は相手の疲労もあって守備の意識が停滞しているチームも多かったかなというのがあったので、そこは見逃さずにいけたし、リーグ戦よりも増えたんじゃないかなとも思います。それが自分の特徴だし、そういうプレーができているのは良いところだと思うので、青学大戦でのシュートにも繋がったんじゃないかなと。
――今のチームに足りていないと思う点は
近藤貴 「個の力」です。攻撃面では個の力で相手を離すところや、守備面では一対一の場面を作られると失点しまうことが多いので、もっと個の力を伸ばさなければ日本一にはなれないですしリーグ戦制覇という目標も達成できないと思うので、個の力が大切かなと思います。
――自身についてここを強化していきたい点はありますか
近藤貴 苦手なプレーというと、キックが結構下手なのでそこは練習していかなければいけないかなと思います。シュートの形ということでは、最近カットインしてから左足のシュートというのを意識しているんですが、まだまだ試合で使えるような感じではないので、シュートの形を増やせるようにやっていきたいです。
――理想のゴールの形はありますか
近藤貴 理想は、昨季のリーグ戦だったら、前期の神大戦のゆずくん(MF島田譲、平24スポ卒、現J2岡山ファジアーノ)からのパスを受けて決めたシュートや、アミノバイタルカップの明大戦での大希くんから来たパスのような形です。ダイアゴナルランという相手の裏を取ってキーパーと一対一になって決めるという形は、得意としているというか狙っている形なので、それを常に意識してやっています。
――アミノバイタルカップでは声を出してチームを強く鼓舞する姿も見られました
近藤貴 上級生だから引っ張っていこうよりは、アミノバイタルカップはトーナメント形式でそこで負けたら終わりだと思っていたので、促しという意味でも自分が声をだしてチームを引っ張っていって勝てたらという気持ちで、自然と声が出ていました。一試合に対する思いというのは毎回変わりませんが、やっぱりトーナメントということでより力は入っていました。
榎本 やっと本気出したんだよね(笑)。
近藤貴 いやそんなことではないです(笑)。大希くんはいつも冷静なんですけど、その中でも点を取っているので相変わらずすごいなって思います。
榎本 嘘つくなよ(笑)。
近藤貴 いや本当ですよ(笑)。
サッカー以外の人間性の部分でも学ぶことが多い
――対談でいつもお伺いしている初対面のお互いの印象を教えてください。お互いが初めてプレーを見たのはいつですか
榎本 僕はF・マリノスユース時代に、貴司の三菱養和とプリンスリーグで一度対戦しましたが、負けてしまいました。あと高円宮杯の準決勝で養和と当たった時は?
近藤貴 僕は出ていなかったです。
榎本 だそうです(笑)。あんまり覚えてないですね。
――その後ワセダに入ってチームメートとして顔を合わせた時は
榎本 最初に来た時の印象は、まあ「スーパールーキー」って感じでしたね。始めに来た時から貴司は練習中ちょっとむすっとしていて(笑)。
一同 (笑)。
近藤貴 それはやばいです(笑)。
榎本 普通に上手いし動きも良かったし、すぐにAチームに上がってきたので。どんなやつなんだろうって思っていたら…(笑)。
一同 (笑)。
――そんな近藤選手と榎本選手が話すようになったのはいつ頃からですか
榎本 あんまり覚えてないよね?でもとりあえず上級生から「スーパールーキーだからな」って言われてめっちゃいじられてて、僕はその流れに乗っていったって感じです(笑)。
――では近藤選手から見た榎本選手の最初の印象は
近藤貴 サッカーの面では上手くて、あんまり守備はしないなって印象がありましたけど、(榎本選手は)F・マリノスユース出身ということもあり、本当に上手いなというのが第一印象でした。ただピッチ外ではあんまり絡んでなかったというか、なかなか近寄り難い雰囲気があったので打ち解けるのが遅かったです(笑)。絡んでみたら面白かったので、もっと早めに絡んでいたらなって思います。
――打ち解けていったのはいつ頃でしたか
近藤貴 2年の8月?
榎本 遅いね(笑)。
近藤貴 でも本当に1年の終わり頃からいじってくれるようになって、ありがたかったです。
――後輩から見た先輩としての榎本選手の存在というのは
近藤貴 人間として本当に良い先輩ですし、サッカー中もそんなに怒らないので、本当に優しい先輩だなって。
――お二人は3年生と4年生という上級生ということですが、一押しの後輩はいますか
榎本 後輩ですと、やっぱり拓真(DF金澤拓真、スポ2=横浜F・マリノスユース)ですかね。見ていて気持ちがいいというか。先輩からは俺の真逆だなみたいな感じでよくいじられていました。ピッチの中でも外でも本当にいいやつなので。試合の映像を見ているときに、ボリュームを下げても拓真の声はだいたい聞こえてきますね(笑)。拓真と希(MF池西希、スポ4=浦和レッズユース)の高音の二重奏。
一同 (笑)。
近藤貴 みんなすごいので…一人じゃなきゃだめですか?あえて言うなら政幸(DF奥山政幸、スポ2=名古屋グランパスユース)ですかね。
榎本 普通すぎだろ(笑)。
近藤貴 じゃあ変えて…。
一同 (笑)。
近藤貴 仲が良いのは、八起(MF多田八起、商1=神奈川・桐光学園)です。
榎本 本当に!?それネタじゃん!(笑)。
近藤貴 いやいや、ネタじゃないですよ(笑)。公私ともに仲良くしているので、今はケガしているのですがフィジカル強そうな体をしている反面、すごくかわいい顔をしているんで(笑)、けっこう色んな面でやってくれるんじゃないかと期待しています。
――お二人は高校までクラブチームでプレーされてからワセダに入学しました。大学で初めて部活を経験されて、気持ちの変化はありましたか
榎本 そりゃあ変化しまくりですね(笑)。全然違いますね。
――榎本選手は小学生の頃から10年間F・マリノスの下部組織で過ごされてきました
榎本 はい。ユースとは全然違いますね。(違いが)ありすぎて逆に言うのが難しいぐらいです(笑)。なんですかね…。(ユース時代には)聞いたこともないような言葉がたくさんありますからね(笑)。
近藤貴 それ毎年ある(笑)。
榎本 F・マリノスユースにいたときは基本みんなサッカーが上手いという前提で考えていました。もちろん攻撃から入りますし。そういう所からワセダに入ってきて、守備の重要性を知りました。ワセダが目指すサッカーがある中、今まで自分の中に染み込んだものが捨てきれずに最初の1年は過ぎてしまい、あまり貢献することができませんでした。そこから2年、3年と重ねていくにつれてワセダのサッカーを体現できるようになったと思いますし、全く違うスタイルのサッカーを経験することで、もう一度ゼロからサッカーについて学ぶようにもなりました。自分が全くワセダのスタイルに合ってないなと感じてから、どうやったら試合に出られるようになるか考えて、プレースタイルも変わりました。本当に変わったと思います。
――ピッチ外で感じることはありますか
榎本 最初は『学生主体』でチームを作るということが良く分からなかったんですけど、サッカー以外の人間性の部分でも学ぶことが多いですね。OBの方々はとんでもない人ばかりですし、身近にも尊敬できる先輩がたくさんいます。恵まれている環境だと感じますし、このチームにいられることは相当なメリットがあると思います。
――近藤選手が三菱養和でプレーを始めたのはいつからですか
近藤貴 小3からですね。なのでユース時代とは真逆のサッカーをやっているワセダに入った時は戸惑いがありましたし、これで勝てるのかという思いも多少なりともありました。それでもチームのやり方を理解しなければ試合には出られないと思っていたので、すぐには体現できなかったですけど少しずつ知ることができて、1年目から出させてもらえたと思っています。サッカー以外の面では、古賀監督はよく「サッカー以前に人としてどうあるべきか」という話をしています。ワセダの部則は「遅刻したら練習に出られない」とかユースのときには考えられないような規則がありますし、そういったところから人間性が磨かれていくのかなと感じています。
――プレー面において、ワセダに入ったことで伸びたと感じる点はありますか
近藤貴 やっぱり守備面ですね。ユースの時まではFWだったので、攻撃だけやって点が取れればそれで良いという思いがあったのですが、ワセダでサイドハーフを経験したことで、ポジションがひとつでもずれてしまうだけでピンチになってしまうという守備の重要性を知れましたし、プレーの幅を広げることができたと思います。
――榎本選手もユース時代から大きくプレースタイルが変わったのでしょうか
榎本 まず(当時のF・マリノスユースは)ワセダとフォーメーションが違って4-2-3-1の1トップでした。その中で自分は何もしなくてもフィニッシュまで持っていけるような感じでしたね。本当に攻撃に専念できましたし、大体攻めている状況なので必然的に守ることも無くなります。だから守備もあまりしなかったんです。大学に入って2トップになりましたし、目指すサッカーも変わったことで「プレーを変えなければ生き残れない」というのを感じました。それまではあまり考えてサッカーをしていなかったなと思います。今でもまだまだですけど、改めてサッカーを学ぶことができたと思います。
――お二人の変化には古賀監督の影響も大きいのではないでしょうか
近藤貴 古賀さんは『学生主体』のチームにしたいということで、プレーに関してはあまり口出ししないというか、選手の判断に沿ってくれる監督です。やはり大きいのは人間性の面です。「自分が良ければ良い」ではなくて、常にチームの利益を考えることを求められますね。
――榎本選手は「尊敬する人物」に古賀監督を挙げています
榎本 古賀さんが見せてくれるサッカーに対する姿勢というか、チームを思う気持ちは「付いていこう」という気持ちにさせてくれます。自主練をしていても、後ろでボールを拾ってくれたりするんです。そんな監督今までいませんでしたね。休みの日でもグラウンドに来て、みんながいなくなるまでいてくれることもあります。姿勢、態度、そういった姿でまさに生き様で語ってくれる監督だと思います。
観客のみなさんに楽しんでもらえれば
――先ほどユース時代に高円宮杯で当たったというお話がありましたが、その時の会場は国立競技場だったそうですね。ユース時代から何度か国立でプレーされた経験はあるのでしょうか
榎本 いや、たぶんその時の1回だけですね。ですから後は大学に入ってから早慶戦が2回とインカレの決勝ですね。
――ではまだ国立でのゴールはないということですね
榎本 昨季の早慶戦は勝つことはできましたけど、あまり良いプレーはできませんでした。ひざも痛めていましたし。まあそんな中全然だめで、交代のプラカードが掲げられて…。「来季は決めなきゃ」と思いましたね。本当に今季やれなきゃ卒業できないというか、すごく後悔すると思うので、とにかく全力で戦いたいと思います。
――その交代の瞬間はいつも以上に悔しさがあったのでしょうか
榎本 正直、プラカードが上げられた瞬間に「あ、俺だ」と思いましたね(笑)。「だよな」と思いながらももっと出たかったですね。何というか、「うわあ…」という後ろめたいような気持ちで下がりました。今季のリーグ戦は交代で下がる場合でもリードした場面が多いので、「後は頼んだ」というような気持ちなんですけど、良いプレーができずに代えられてしまうときは、悔しいというか、後悔の気持ちがあります。
――近藤選手は国立でのプレー経験は
近藤貴 その高円宮杯の時が初めてでしたね。特に国立だからどうという思いはないのですが、早慶戦というたくさんの観客が入る試合、独特の雰囲気の試合に出られることは幸せだと思っています。自分自身まだ早慶戦では活躍できていないので、今季出ることができたら点を決めたいなと思っています。
――榎本選手は早慶戦で見てもらいたい点に「生き様」と書かれています
榎本 本当に1試合ですし単なる定期戦かもしれないですけど、このワセダに入れて、ア式蹴球部に入れてサッカーができているのも、今まで自分が一つひとつやってきた結果だと感じていて、自分の人生の中での必然だと思っています。自分を育ててくれた指導者や親、仲間の思いをまさに背負える試合だと思うので、自分の積み上げてきたものを本当に全て出したいです。そういう意味で「生き様」と書いちゃったんですけど(笑)。でも本当にそうだと思っています。チームとしても個人としても、サッカーだけでなく積み上げてきたものが試される場だと思います。全力でプレーします。
――近藤選手が早慶戦で見てもらいたい点は
近藤貴 やっぱりプレー面では、ドリブルであったりスピードが特徴なので、そういったプレーで観客のみなさんに楽しんでもらえればいいなと感じています。
――早大学院出身ですが、高校時代からのワセダのプライドのようなものはありますか
近藤貴 いや、高校の頃は自分がワセダだというのはなかったですね。そういった気持ちは大学に入って、早慶戦などを通じて徐々に芽生えていきました。3年間の中でワセダのプライドというものを築けたように思えるので、慶大には負けたくないという思いも強くなってきました。意識する選手は武藤選手ですね。小学校から知っているので。あんまり活躍してほしくはないです(笑)。
――榎本選手は春先にJリーグクラブの練習に参加されたというお話がありましたが、その後何らかの進展はありましたか
榎本 いや、展開は特にないです。だから総理大臣杯のような(注目度の高い)全国大会で良いプレーをしたいですね。そういった思いもあって、アミノバイタルカップは勝たないと本当にやばいと思っていました。本当に自分でつかんだものだと思いますし、この先の道は…もう残り少ないので、今までやってきたことを全て出し切っていきたいです。
――近藤選手のプロへの思いは
近藤貴 身近にJリーガーになった先輩がいることで、プロという目標が近付いているような気もしますし、どうやったらプロになれるか考えるきっかけになりました。まだまだですけど、大希くんも言ったように総理大臣杯などでスカウトの目に留まるプレーができれば良いなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 芦川葉子、佐藤拓郎、松下優)
◆榎本 大希(えのもと・たいき)
1991(平3)年5月25日生まれ。174センチ、69キロ。神奈川・横浜市立金沢高出身。前所属・横浜F・マリノスユース。スポーツ科学部4年。かねてからエナジードリンクを愛してやまない榎本選手。『試合前のレッドブル』は健在ですが、今季は三竿選手が持ち込んだという新たな秘密兵器が。その名も『サカナのちから』。アミノバイタルカップ激闘の裏側には、強力なサプリメントの支えがあったようです!
◆近藤 貴司(こんどう・たかし)
1992(平4)年4月26日生まれ。167センチ、63キロ。 東京・早大学院出身。 前所属・三菱養和SCユース。教育学部教育心理学科3年。対談後の写真撮影では、照れつつも最近お気に入りのポーズをしてくれました。榎本選手いわく近藤貴選手は「ネタの宝庫」なんだとか。松澤選手がリクエストしていた『中国風じゃんけん』など、これからの取材でもネタを披露してくださるのを楽しみにしています!